パートナーが支える双極性障害

みなさんこんにちは。Bipolar Diaryボランティアチームの児玉です。

前回の記事では、世界のトレンドや統計データから見える双極性障害の社会全体の動きについて述べましたが、実際の双極性障害患者の治療には何が有効なのでしょうか。

厚生労働省によると、双極性障害は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつとされており、鬱状態だけが起こる病気を「鬱病」といいますが、この鬱病とほとんど同じ鬱状態に加え、鬱状態とは対極の躁状態も現れ、これらをくりかえす、慢性の病気です。

鬱状態では死にたくなるなど、症状によって生命の危機をもたらす一方、躁状態ではその行動の結果によって社会的生命を脅かす、重大な疾患であると認識されており、この精神疾患の治療には薬物療法心理療法の二種類の方法が有効とされています。

薬物療法

薬物療法については医師に対して自身の躁状態のエピソードを含む、適切な説明をする必要があります。特に鬱状態で診察を受けた場合、その症状が鬱病なのか双極性障害なのかを判断することは医師であっても難しいです。「鬱病と診断されて抗鬱薬を飲んだけれど、症状が悪化した」という方は、実は鬱病ではなく、双極性障害だった。というパターンが多いのはこのためです。

心理療法

心理療法とは、病気をしっかり理解し、その病気に対するこころの反応に目を配りつつ、治療がうまくいくように援助していく、ある種の精神療法を指します。特に病気の性質や薬の作用と副作用を理解し、再発のしるしやきっかけになるストレスと最初に出る症状(初期徴候)は何なのかを自分自身で把握し、その対処法を本人と疾患者を支えるご家族、恋人、ご友人(以下、パートナー)同士で共有することが大事です。

Bright Questによると、この心理療法は鬱状態の時と、躁状態の時で対処法が異なると言います。また実際のパートナーと一緒に治療するプロセスについても詳しく説明されていましたので、今回の記事ではこの記事を翻訳し、パートナーが疾患者をサポートするためのご紹介いたします。

鬱状態の疾患者との向き合い方

薬物の適切な処方の仕方や有効な治療法に関する情報が不足しているパートナーにとって、鬱状態の疾患者と向き合うことはとてつもなくフラストレーションがかかるものです。一方で、最愛のパートナーが支えてくれる環境は治療のプロセスにおいてポジティブな影響を与えます。

  1. 楽観的になれるようにする
    楽しく話したり、熱意を込めて話す必要はありません。パートナーから、適切な処方を続ける限り、回復の見込みがあることを疾患者に伝えましょう。
  2. ポジティブな言葉を投げかける
    努力してうまくいったことや、継続的に改善したことについては、都度褒めたり励ましましょう。
  3. 自分のせいにして考え込みすぎない
    疾患者はしばしば落胆的、あるいは絶望的な気持ちになってしまいます。ただしそれは必ずしも処方やパートナーの支え方が間違っているということを示すわけではありません。
  4. 喜びを感じることはどんどんやるように促す
    喜びに繋がる小さな出来事の積み重ねが鬱状態を抑制し、トレンドを反転させることが出来ます。例えその喜びが些細なものであっても、小さな前進が病気の改善をもたらします。
  5. 毎日の日課を作り、必ず実行してもらうようにする
    必ず実行しなければならない日課を作ることは、例えその日課が毎日実行出来なかったとしてもモチベーションの低下を克服することが出来ます。
  6. 自殺の恐怖を真剣に伝える
    双極性障害が引き起こす抑うつの症状は自殺のリスクを増加させます。 (Phychiatric TImesによると50%以上の疾患者は過去に自殺を試みたことがあると答えています。) もし疾患者が自殺に関連する話をした場合、直ちに専門の精神治療やパートナーのサポートを提供するべきです。

双極性障害における鬱状態は、悲しみや失望を表すサインではないということを認識してください。鬱状態は適切な処方と家庭における無償の愛が必要とされる精神状態の現れを示しています。

躁状態の疾患者との向き合い方

躁状態の時の症状は疾患者によって様々です。疾患者によっては無害な場合もありますが、入院を必要とする危険な状態の場合、その症状を克服することは並大抵のことでは有りません。

パートナーの方は躁状態の疾患者に向き合う際には以下の点に気をつけてください。

  1. 疾患者を一人にしないこと
    躁状態は予期せぬ出来事を生み出します。その際に必ず側にいてあげるようにしてください。
  2. 気長でいること
    躁状態が引き起こす多幸感や多弁、多動症は自身を制御出来ていないように見えるため、その疾患者を見守るだけでも困難を要します。パートナーが気長に落ち着いて向き合うことが症状の悪化を遠ざけます。
  3. 疾患者の言葉に耳を傾け、その反応の仕方に気をつける
    躁状態の疾患者は頭に浮かんだ言葉を話しますが、その多くは意味をなしていません。そのような状況下では、話をきき、批判したり正したりしないこと。寛容でいることが最も建設的です。
  4. 妄想や幻覚症状に襲われた場合、直ちに助ける
    精神異常はしばしば躁状態によって引き起こされます。症状が発生した場合は直ちに医療機関に助けを求めましょう。
  5. リスクや危険を伴うことは避ける
    疾患者はしばしば衝動的になり、自身の身を滅ぼす行動を起こしてしまいます。このような失敗は悲劇を生み出すことに繋がりかねないため、彼らの行動の抑制に努めましょう。

躁エピソードは必ずしも疾患者の危険を伴うわけではありませんが、注意が必要です。パートナーの皆さんは、些細な心配であったとしても、どのように対処するべきかを専門の医療機関に相談しましょう。

パートナーと治療

パートナーの方々は躁状態、鬱状態で辛いときのサポートをするだけでなく、以下の方法で双極性障害の治療や回復に向けたサポートをすることが出来ます。

  1. 疾患者の医師に治療プログラムについて話を聞く
    知識は最大の武器です。より多くの情報はより多くのサポートを提供することが出来ます。
  2. 薬の使用状況を把握する
    疾患者は症状が重いとき、より多くの薬を消費してしまったり、あるいは副作用を恐れて全く飲まないことがあります。パートナーが薬の使用状況を把握することでどちらの状況も防ぐことが出来ます。
  3. パートナー向けのセラピーへ参加する
    地域や医療団体が開催するセラピーに参加することで、パートナーの言葉や行動が疾患者にどれだけ影響を与えるかを把握することができます
  4. 日課の手伝いをする
    抑うつ状態や躁状態が引き起こす精神的なつらさは、簡単な作業やタスクでさえ実行困難な状況に追い込みます。(街へ出かけることやお金を管理すること、病院を予約すること、パートナー向けのイベントへ参加することなど)パートナーの存在はこれらの日課を手伝ったり、忘れたときに知らせることでサポートすることが出来ます。
  5. 正直にかつ建設的なコミュニケーションをする
    疾患者だからといって、甘やかしたり、ひいきしたり、逆に厳しい態度で接する必要はありません。症状が改善しているか(逆に悪化しているか)を正直にフィードバックし、適切な洞察とアドバイスを与えましょう。
  6. 落ち着いた、安心感のある、一貫した家庭環境を築く
    テレビや音楽の音量は下げ、ほどよく日差しの入る環境にしましょう。疾患者の前で喧嘩したり不快な話をせず、快適で予測可能な生活環境が望ましいです。
  7. 毎日の治療の記録を手伝う
    疾患者は症状や挫折、小さな勝利、日々の気持ちの変化などに関する毎日の記録をすることで、医師に症状の改善状況を報告することが出来ます。パートナーはその毎日の状況について話し合ったり、その日に起こった出来事の記録を手伝うことが出来ます。
  8. サポートしているパートナー同士で会議を週次で行う
    症状の改善状況や、フラストレーションのシェア、サポートスケジュールの調整、変更提案などの機会をパートナー同士で作りましょう。疾患者に秘密で行う必要はありません。必要に応じて疾患者を招待し、意見交換する場を設けましょう。
  9. 緊急時の計画を立てましょう
    疾患者のサポートをしているパートナー全員で緊急時の連絡先と対処法について共有しましょう。専門の医師に相談し、プランを作成することが出来ます。

パートナー自身を守ること

今回の記事では主に双極性障害患者のパートナー向けのサポートに関する海外の事例を抜粋して執筆しました。

躁状態と鬱状態、治療に向けたサポートそれぞれを知ることで、疾患者とパートナーの両者が安心して向き合える環境を作ることが出来ます。しかし一方で日々精神状態の変化の激しい疾患者を前に看病をすることは自身の精神的な負担を増大させます。一人で抱え込み、責任を感じて自分を追い込まないように注意しましょう。ストレスや不安を継続的に感じてしまったら、距離を置いて休むことも大事です。

私達Bipolar Diaryチームも疾患者とそのパートナーを支えるサポーターです。アプリという媒体を通して、皆様のお手伝いをしながら、一人でも多くの方へ適切な健康管理と安心を届けれるように、これからもサポートを提供していきたいと思います。

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記事:児玉知之
Bipolar Diaryのボランティアスタッフ。2011年アメリカのサンフランシスコ州立大学を卒業後、東京都内の複数のIT系事業会社で海外営業や国内外のプロジェクトマネジメントなど様々な業務に携わる。最近の悩みは息子の子育て。

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